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窓ガラス

綿あめ、遊具、犬の舌

母さん、あなたはホタルイカ

目覚めると母さんはホタルイカになっていた。ぼくの部屋の床に、それはへばりついていた。朝のひかり、のなかでぬらぬらと発光するホタルイカは、生ぐさいくちびるをおもわせた。

 

ホタルイカになった母さんを、あるいは母さんだったホタルイカを手にとると、ぼくの長くのびた爪に、つめたい触手をからませてきた。

 

ぼくは触手のひとつを、くちのなかへ垂らし、前歯でかみきってみた。すると触手は舌のうえでうねり、跳ね、のどのくらやみへ墜落した。

 

ぼくは疲れてしまい、ホタルイカをからのコップのなかに入れた。それを陽だまりに置くと、みるみるうちに溶けてゆき、白いみずになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

今日未明、全世界の海岸に、夥しいかずの母親がうちあげられた。

 

ぼくの胃のなかでは、いまでも、いっぽんの触手が、しずかにうごめいている。