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窓ガラス

綿あめ、遊具、犬の舌

インターネットは死んだらしいよ

 

あふれだす、声。ぼくたちの自尊心ふいに歪んだ球体になる

 

ハレルヤを聴くたび女児の増えてゆく陽射しに耳を赤らめながら

 

僕たちの記憶、敗北、ああすでにインターネットは死んだらしいよ

 

壊したらこわれてしまう人といて自殺は犬のように死ぬこと

 

はじめから死んでいたのか砂浜でしずかに崩すおまえの城を

 

断崖で遊んでいたの。水死体ふくらむ夢のようにやさしく

 

あと一歩すすめば落ちてゆくだろうおまえの爪は剥がれて、春夜

 

春のあさ 傷ぐちに手をつっこんで世界は終わるいつものように

 

ペンギンの皮膚からにじむ絶望をぼくらは舌でとかしてしまう

 

笑うとき、ガラスの犬がくだけちる。くちびる荒れたままさようなら

母さん、あなたはホタルイカ

目覚めると母さんはホタルイカになっていた。ぼくの部屋の床に、それはへばりついていた。朝のひかり、のなかでぬらぬらと発光するホタルイカは、生ぐさいくちびるをおもわせた。

 

ホタルイカになった母さんを、あるいは母さんだったホタルイカを手にとると、ぼくの長くのびた爪に、つめたい触手をからませてきた。

 

ぼくは触手のひとつを、くちのなかへ垂らし、前歯でかみきってみた。すると触手は舌のうえでうねり、跳ね、のどのくらやみへ墜落した。

 

ぼくは疲れてしまい、ホタルイカをからのコップのなかに入れた。それを陽だまりに置くと、みるみるうちに溶けてゆき、白いみずになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

今日未明、全世界の海岸に、夥しいかずの母親がうちあげられた。

 

ぼくの胃のなかでは、いまでも、いっぽんの触手が、しずかにうごめいている。

 

ペルシャ猫

電車に乗り合わせた人間はひとり残らず狂人であった。わたしは驚いて胎児をつり革に固定し、隣席の人間に譲り渡した。助け合いは大切である。感動した第一車両はゆるやかに横転しその中身を大地へ還す。美しい光景である。わたしは狂人たちと笑い合い、互いに握手した。腸捻転のどよめきは世界各国を覆い、涙なしには強姦することが出来ない。素晴らしい感謝の念はわたしの胸中を駆けめぐり、わたしは一種の核爆発を起こした。灰燼に帰した国土で、肩を組み合う狂人の群れ。プラズマに変化したわたしは確信した、地球は癲狂院なのだ。それも、厳かで壮麗な、言表不能な慈愛に満ちた。

 

わたしは果てしなく凝縮しながら宇宙の破滅を夢むペルシャ猫に転生した。

そしてその翌年、わたしの飼い主である女児の慟哭により、宇宙は感動のフィナーレを迎え、あらゆる存在が白紙へと還るのである。

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電子レンジ

家電屋に電子レンジを見に行った帰り、皇帝ペンギンに母親を殺された。ぼくは女児を凝視していたのでそれを知らず、女児の恋人になるのだった。

 

あくる日の朝、女児は右腕を残して消えていた。ぼくはそれに苺ジャムを塗って食べてから新しい母親を探すことにした。外は大きなコオロギで溢れていて、実にうるさく感じた。ぼくは仕方なく道端の女児を蹴りとばして、世界を真冬に変更した。ぼた雪はやわらかく降り、降りながら人類は滅亡するのであった。

 

今日は死亡率のはね上がると言われる曇天である。死体はぼくの頬を染め、アスファルトは内臓色に輝いていた。お母さあんとぼくは叫んだが、母親の死は電子レンジのような確かさで沈黙している。

 

明日はきっと晴れるだろう。

明日は早起きして、動物園に皇帝ペンギンを見に行こう。

 

 

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